Sound&Rcording Magazine 2016/2月号 32bit浮動小数点記事について
サウンドアンドレコーディングマガジン(以下サンレコ)の2016年2月号 企画の問題について
平沢進氏の表紙のサンレコ2016年2月号の特集記事
「理論と実践で学ぶ32ビット浮動小数点」を目にした方も多いことでしょう。
「32bit浮動小数点って何? 「24bitとどれだけ違うの?」と思っていた人たちにはわかりやすく説明できている良い特集だと思うのですが
ひとつ気になる事がありましたので書かせていただきます。
95ページから始まる32ビット浮動小数点の説明、メリットなどの記事の後に
実践 32ビット浮動小数点で音は変わるのか?というコーナーが有り
峯岸良行氏と森元浩二氏で同じミックスデータで違いを検証する という趣旨の内容となっています。
この24ビット、32ビットそれぞれの完成データがダウンロードできるようになっています。
音源はこちらからダウンロードできます
やはり24bitと32bit浮動小数点は大きく音が違うのか?
さて この企画のタイトル通り 音は変わるのか? という事が気になる読者も多いと思いますが
実際聞いてみましょう。
たしかに違うんです。
何が違うのかを一番簡単に調べる方法は 片方のオーディオファイルを位相反転して相殺し、残った音が"差"となるのですが・・・
位相反転して聞いてみました。
すると奇妙なことが起こります。
ドラム、ベース、ボーカルサンプルなど以外は全く消えません。 主なシンセやピアノ、グランカッサの音がはっきりと残るのです。
詳しく見てみると そもそもタイミングなどが違っているようなんですね。
タイミングが違うのであれば逆相をぶつけても消えないのは当たり前・・・なのですが・・・
この音のズレが何で起きているか? が かなり 問題なんです。
仮にProToolsHDX内の処理で32bitと24bitでこういったズレが起こるのであれば
大問題
なのですが・・・
原因が気になったのでもう一度よーく記事を読んでみると
102P「まず、トラック・メイカーであもある峯岸氏がAPPLE Logic Pro Xで楽曲を制作。マルチでファイルを32ビット浮動小数点と24ビットで書き出し、・・・・」
と あるのです。
32bit浮動小数点で書きだしたオーディオをProToolsで24ビットに変換して読み込むのではなく
Logicで2回書きだしたオーディオで検証した という事なのですが
おそらくLogocのヒューマナイズ機能か別の何かが原因で書き出す際にいくつかのソフトシンセが違うタイミングで書きだしてしまっている という可能性が一番高い と判断しました。
Logicにはからヒューマナイズ機能というタイミング・ベロシティをある程度ランダムに揺らすという機能があり、それを有効にしてあるのではないか?という指摘をうけました。 それの可能性が高いかもしれません
このような
毎回違うタイミングで(ベロシティーも少し違う)書き出されてしまう
という状態でトラックを制作した峯岸氏がこのLogicの機能を知らなかったという事になるのでしょうか?
又は知っていたうえで今回の手法で音質検証実験に臨んだという事なのでしょうか?
いずれにしても検証実験の手法としてはおおいに疑問が残ります。
今回のサンレコ誌企画の問題点
さて
何故こんな事を書くかというと
冒頭の 32ビット浮動小数点で音は変わるのか?というコーナーの趣旨が これだとタイミングとベロシティーが若干違う音を同じプラグインでミックスした音の聴き比べになってしまうので、正確な音質の検証にはならなくなってしまうのです。
違う音を聞いて 違うだの良いだと感想を書かれても 実に曖昧ですよね。
実際に両方に差は感じますが それが発音タイミングの違いによる聞こえ方の差なのか?単純に32ビット処理由来の差なのか?が不鮮明です。
ましてやベロシティーにも差がある可能性が残るとすると はっきり言って企画自体が台無しになってしまうほど大きなミステイクであると考えます。
せっかくいい企画できちんとした森元さんというベテランエンジニアを起用したのに 非常に残念ですね。
サンレコさん 今後の改善を希望します。
***********************************************
追記
リットーミュージック サンレコ編集部に今回の件について検証をお願いする問い合わせをしたところ
以下の様なご返答をいただきましたので掲載します。
【●▲様
お問い合わせいただき、ありがとうございました。
ご指摘いただきました件につきまして検証いたしました。
1)峯岸氏がLogic Pro Xで制作した楽曲をトラック別に書き出したファイルにつきまして
峯岸氏に書き出したファイルの逆相差分検聴をお願いいたしましたが基本的にすべてのトラックについて、ご指摘いただいたようなMIDIからのオーディオ書き出しそのものによる差(タイミング、音量など)は見られませんでした。
ただし、プラグイン音源およびエフェクトのオシレーターおよびLFOがDAWのクロックとシンクしていないため、一部のトラックではモジュレーションのタイミングが異なることにより、個別に書き出した32ビット浮動小数点と24ビット固定小数点で、その違いの分だけ異なります。
編集部でも素材を確認しましたがDAW画面上、同位相であっても32ビット浮動小数点ファイルと
24ビット小数点の差分が認められるものが一部あり、これは上述した理由だと考えます。
2)森元氏によるAVID Pro Tools HDX上でのミックスにつきまして
森元氏によるAVID Pro Tools HDX上のミックスでも、モジュレーションを使用したエフェクト(ディレイ/リバーブなど)が使用されており、そのモジュレーション・タイミングの差は素材の書き出し時と同様に存在しています。
従いまして、32ビット浮動小数点で書き出したミックスと24ビット固定小数点で書き出したミックスではファイル・フォーマットの違い以外に、そのエフェクト分の差は存在しています。
ただし、取材につきましては何れのミックスも複数回再生して試聴しておりまして、その都度モジュレーションのタイミングは異なります。
その上でお二方にコメントをいただいておりますが、そのモジュレーションのタイミングに起因する違い(再生ごとでの印象の違い)はありませんでした。
3)企画全体につきまして
2月号特別企画内の「実践」では32ビット浮動小数点ファイルと24ビット固定ファイル、いずれをベースにするのかという
ワークフローの違いに着目しております。従って、再生ごとにタイミングの変わるモジュレーション系エフェクトを排除するといったことはせず、峯岸氏、森元氏に通常の制作の流れに従って、まず32ビット浮動小数点ベースで作業していただいた後、24ビット固定小数点ファイルにそのまま差し替えるという流れを採りました。
そこでトラック制作者、ミックス担当エンジニアが受けた印象からワークフローへの提言として記事をまとめていることは多くの読者の方々にご理解いただけたことと思います。
しかしながら、●▲様からご指摘いただきましたように、これが厳密に32ビット浮動小数点ファイルと24ビット固定小数点ファイルの音質を比較するという趣旨であるならば再生ごとにタイミングの変わるエフェクトは排除する、あるいはミックス前の素材の同一性を担保するために32ビット浮動小数点ファイルから24ビット固定小数点ファイルに変換するといったことが必要になるかと思います。
今後の記事制作の参考にさせていただきたいと考えております。
貴重なご意見ありがとうございました。】
以上
ソフトシンセのLFOやモジュレーション系のエフェクトで差が生じている
という事ですが、実際聞いてもらうとわかりますがピアノやグランカッサ、ストリングス系まで丸々残る(絶対的な時間差がある)ので
発音タイミングは合ってるけど揺れ方が違うという説明には納得しかねるがものがありますが
まあ良しとしましょう。
私が気になったのは赤文字のところをです。
102Pの企画タイトルは
「32ビット浮動小数点で音は変わるのか?」
です。
それを 24ビットと32ビット どちらで作業したほうがいいかな?という事を重要視した と説明されているのが納得いきませんね。
そんなこと聞かれたら「32ビット浮動小数点に決まってる 実験なんかしなくていいよ」と誰でも思うでしょう・・・。
あえて音が変わるのか?という事を実践したはずなのに 音が変わる要素は省かなくてもOK とは・・。
なんとも言えませんが 今現在は読者もそれなりのDAW環境を持っているわけで あまり意味のない記事は逆に不信感や期待はずれの気持を生むだけかと考えます。
以上
サンレコ2016年2月の記事についての検証、見解でした。
おわり
2015年 音楽売上ランキングが出ました
さて 恒例の今年一年のランキングが発表されました。
実はもう書く気が全然起きないのですが一応年末の恒例という感じで掲載します。
まずは・・
年間シングルランキング 1位~15位
1位 僕たちは戦わない/AKB48
推定累積売上数:1,782,707
2位 ハロウィン・ナイト/AKB48
推定累積売上数:1,328,411
3位 Green Flash/AKB48
推定累積売上数:1,045,492
4位 唇にBe My Baby/AKB48
推定累積売上数:905,490
5位 コケティッシュ渋滞中/SKE48
推定累積売上数:702,299
6位 今、話したい誰かがいる/乃木坂46
推定累積売上数:686,539
7位 太陽ノック/乃木坂46
推定累積売上数:678,481
8位 命は美しい/乃木坂46
推定累積売上数:620,555
9位 青空の下、キミのとなり/嵐
推定累積売上数:571,597
10位 Don’t look back!/NMB48
推定累積売上数:530,830
11位 Sakura/嵐
推定累積売上数:521,067
12位 愛を叫べ/嵐
推定累積売上数:519,330
13位 Thank youじゃん!/Kis-My-Ft2
推定累積売上数:475,048
14位 前のめり/SKE48
推定累積売上数:459,769
15位 starting over/三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE
推定累積売上数:456,179
年間アルバムランキング 1位~10位
1位 Japonism/嵐
推定累積売上数:981,639
2位 PLANET SEVEN/三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE
推定累積売上数:868,247
3位 DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム/DREAMS COME TRUE
推定累積売上数:828,505
4位ここがロドスだ、ここで跳べ!/AKB48
推定累積売上数:780,591
5位 0と1の間/AKB48
推定累積売上数:687,688
6位 REFLECTION/Mr.Children
推定累積売上数:576,867
7位 葡萄/サザンオールスターズ
推定累積売上数:534,482
8位 Tree/SEKAI NO OWARI
推定累積売上数:484,588
9位 関ジャニ∞の元気が出るCD!!/関ジャニ∞
推定累積売上数:348,197
10位 KIS-MY-WORLD/Kis-My-Ft2
推定累積売上数:336,069
年間アーティストトータルセールス 1位~5位なんてのも発表されています。
個人的にちょっと気になっているのが、1年に1曲はでる 色物ヒット曲(勝手にそう呼んでるだけですが)
「およげたい焼きくん」「おさかな天国」「だんご3兄弟」「マツケンサンバ」「まるまるもりもり」など
何かのきっかけで子供から大人までが流行り病にかかったように突然ヒットする類の曲です。
いちおうクマムシの「あったかいんだからぁ♪」がそれに近いかなあ・・とも思ったのですが2015年2月発売でちょっと今年の曲って感じが薄れてしまったように感じます。
2015年ランキングの感想に話を戻します。
もう清々しいほど いつもと同じ です。
最初に 書く気が起きない と書いたのは 気に入らないとかいう事ではなくて
変化がなさすぎてどうにも感想が出ない という意味なんですよね。
アルバムではいつものサザン、ミスチル、ドリカムなどに混ざってSEKAI NO OWARIが8位にきたあたりがんばったなあという印象はありますが
来年は圏外かもしれませんね。
特に今年はアニメのキャラソンや声優の楽曲がランキングに多く入った印象があります。
これはアニメ関係が一定数売れている+他の曲が全く売れない という構図かと思われます。
2009年あたりから年間ランキングが変わらないので 売れている(売っている)ものにおんぶにだっこを続ける音楽業界。
もう音楽業界と呼ぶのに違和感があるのですが 来年はどんな事が起きるのでしょうか?
来年の年末に同じような事を書いていそうな予感しかしませんが ・・終わりとします
大先輩が亡くなって感じたこと
2015年12月8日
ミキサーの大先輩である黒田勝也氏が亡くなりました。
黒田さんにはレコーディングエンジニアという呼び方よりもミキサーのほうがしっくりくるでしょう。
あえて敬意を込めてミキサーと呼ばせていただきます。
この夏まで現役で仕事をされていたようです。
72歳でした。
私の生まれる前からミキサーとして数々のレコードに携わってきた黒田さん。
先輩なんていう言葉では言い表せないくらいの先駆者です。
黒田さんに直接教わった事を少し紹介します。
弦のイコライジングの事。
録りで16K以上をシェルビングでフルテン、さらにミックスでも同じくフルテン。
正直びっくりしました。
それであの演歌や歌謡曲の弦の音になるんですよね。
「弦は倍音楽器だからハイ持ち上げればいいんだよ」と笑いながら教えてくれました。
また1176で作るドラムサウンド。
その昔どうやったらビートルズのサウンドみたいになるか皆で研究したらこんなむちゃくちゃな設定なんだよ
と 本来の音響機器の使い方の常識を無視したビートルズのサウンドに驚いたそうです。
音楽業界、特にポップスにあたっては黒田さんの世代が初代にあたります。
まだまだ大先輩の方々が現役で活躍されています。
イギリスやアメリカの音楽やサウンドを模倣し、成長をしてきた日本の音楽業界。
その一端に黒田さんのような第一世代のミキサー達がいたのですね。
今でも日本の昔の歌謡曲や演歌の音はすごいと感じます。
絶対に真似できません。
もちろんミュージシャンの音や演奏も大きいのですが、当時の一発本番の緊張感から生まれてきた数々の名作には
今の時代には作れない存在感があります。
黒田さんはいつも笑っていて現場は和やかなムードでした。
親ほど年の離れた駆け出しの自分にも仕事を任せてくれたり
マイクのチョイスなどもさせてくれたりと、お父さんのような存在だったと感じます。
天国にはレコーディングスタジオなんて無いでしょうから
きっとすぐに生まれ変わってスタジオに戻ってくるような気がします。
ProToolsが使えればレコーディングエンジニアを名乗れるなんて笑われますね。
機材ばかり便利になっても全然腕がダメじゃないか
と言われないようにしたいと思います。
胸を張ってミキサーを名乗れるように。
定額制音楽配信サービスについて思うこと
定額制音楽配信 いわゆる音楽ストリーミングサービスというのが今年日本で本格的に始まった。
AWA、LINE MUSIC、Apple Musicが代表的なところ。
今後Spotifyへ電通が出資したという事で日本上陸も間近という事だろう。
AWAがサービス開始した時に登録して使用してみた。
感想としてはまだまだ使いにくい。という印象。
無料期間が終わったが結局、有料会員にはなっていない。
それでもFreeというステータスで月に60分の再生ができる。
さて、この定額制音楽配信サービス。
最近は音楽業界の最後の望み という感じで満を持して始まったサービスなのだが
「AWAが400万、LINE MUSICが640万DL」とアプリのダウンロード数は好調(?)な感じだが、実際はどのくらいのユーザーが有料会員になるか?お金を払い続けるのか?というのは疑問だ。
そもそもこのサービスが日本にだけ入ってこなかった理由が「CDの販売に影響する」という理由と「レンタルCD業者や有線放送業者への配慮」だと自分は考えている。
実際はわからないが日本が世界的に珍しいCD文化でいることやレンタルCD業なるものが幅を利かせているからだ。
とにかく沢山の音楽を日常的に聴きたい人には素晴らしいサービスであることは間違いない。
定額制音楽配信サービスというのは例えるなら世界中のありとあらゆる本を集めた巨大な図書館のようなものだ。
そこには人気漫画はもちろん小説、洋書、専門書などありとあらゆる本がデジタルデータで置いてある。
有料会員ならデータを見放題 といったサービスと同じだろう。
さて、ここで問題になるのは多くの割合を占める一般的な普通の人はこの電子図書館で何を見るだろうか?
ドイツ語で書かれた医学専門書や考古学書、知られていないマイナーな作家の絶版書 そんな本を手に取るだろうか?
無い ほぼ無い と言っていいと思う。
そういうものを必要としている人には素晴らしいサービスになる一方、"ワンピースなどの人気漫画しか読まない人たち"にとっては無用の長物でしかない。
そういった人たち は今までどおり好きな漫画の単行本を買うだろう。
回りくどくなったが、本や書籍、読書が大好きな人にとっては巨大図書館は嬉しいけど
普通の人にとっては必要がない。
定額制音楽配信サービスも同じような存在になってしまうのでは無いか?という気持ちがある。
レコード会社や日本の音楽業界がやらなくてはいけないのは
「どうやってお金を集めるか?」ではなく「どうやって音楽を好きになってもらうか?」だと思う。
どんなに巨大なライブラリーを提供したところで、"ある特定のジャンルや歌手にしか興味を示さない層"が殆どなのでは あまり意味が無いし将来性も期待できない。
そもそも日本と欧米 特にアメリカとでは生活の文化的なちがいが大きい。
週末パーティーを開いて酒を飲んで音楽に合わせて踊る なんて事はやらない。
そういう文化自体が無いのだから好まれる音楽の内容だって当然変わってくる。
今までみたいに一生懸命洋楽を模倣してきた時代は終わった。
欧米で今流行ってる音楽(EDMなど)をそのまま輸入しても日本ではそれほど浸透しない時代になった。
同じように定額制音楽配信サービスだってそのままではダメで"日本式"というものを作らないといけないと思う。
まあ まだ始まったばかりのサービスなのでこの辺りは各社色々と考えてくるような気がしていますので、今後に期待したいと思う。
最後に、これからは音楽が本当に好きな層に向けて、より深いサービスを提供するという流れになっていくはずです。
定額制音楽配信サービスも使用スタジオ名、プロデューサー名、参加ミュージシャン名、アレンジャー名、エンジニア名、発売年などで検索が可能になれば
本当の意味での資料として価値のあるものになると思います。
是非このあたりは検討して欲しいですね。
定額制音楽配信サービスについて思うこと でした
終わり
あなたは何故"それ"をしたいのか?~目的と手段について~
さて、近年感じているモヤモヤの原因について書こうと思います。
そのモヤモヤとは「目的と手段がわかってない人が多すぎる」という事です。
例えば私のところには「将来レコーディングエンジニアになりたい」と相談にくる方が毎年それなりの人数います。
レッスンの前には色々と話を聞く"ヒアリング"を行うのですが、話を聞いていくと冒頭に書いた"モヤモヤ"とした気分になることが多々あります。
レコーディングエンジニアというのは職業の名称のひとつです。
もちろん、目標になり得るものではあると思います。
ただしレコーディングエンジニアにだけなろうと思えば今日から誰でもレコーディングエンジニアを名乗れます。
実際にそうした人たちは沢山いると思いますが・・
何が言いたいかというと レコーディングエンジニアになって何をしたいのか? が無い人が結構いるというのが私が感じる"モヤモヤ"の正体です。
「目的と手段」という言葉があるように、何かの目的が先にあって、それを遂行するために手段がある、という事の意味なのですが
これが逆になってしまう、または目的なき手段になってしまっている場合がかなりの数存在します。
それは色々なもの、仕事や商品、サービスを利用する際でも共通します。
例えば、最近目にした記事で「誰でも簡単にボーカロイドをはじめられる」というものがありました。
ボーカロイドとは歌のような音を出せる楽器の事ですが
このボーカロイドを始めるっていうのが発展して"ボーカロイドをしたい"みたいなものになってしまっているのではないか? という事です。
同じように「DTMをやりたい」「歌手をやりたい」「アイドルになりたい」「メジャーデビューしたい」とか、
もっと範囲を広げると「金持ちになりたい」「いい会社に就職したい」「結婚したい」とかも同じなのですが
どうして歌手になりたいのか? 歌手になったら何をしたいのか?
(歌手の部分を他のものに変えてみてください)
これがスポーンと抜けているような気がするのです。
話を戻すと
レコーディングエンジニアになりたい という気持ちはよくわかります。
でも レコーディングエンジニアになったら何をしたいのか?何をしたくてレコーディングエンジニアになりたいのか? が無い場合があるのです。
私の話をしますと、私がエンジニアになりたかった理由は「音楽が大好きで音楽制作の現場を仕切りたかったから」です。
当時、最後の最後まで音楽の中の音"サウンド"を決定付けするのは、ミュージシャンでもなくプロデューサーでもなくエンジニアだと思ったからです。
バンドをやりたい とか メジャーデビューしたい アイドルになりたい
という気持ちは悪くはありません。
でも もう一度考えて欲しいのです。
何故そう思うのか? 何をしたくてそう思うのか?
という事を。
そうすると、やるべき事や 本当にやりたい事が見えてくると思います。
それでも「いや 自分は歌手をやりたいんだ」と言うのであれば、本物の歌手になってください。
歌はもちろん抜群に上手くないといけません、あやゆるジャンルを歌いこなさなくてはいけません。
と
私は考えます。
求める歌手象がそういった事でないならば歌手って何ですか?と思ってしまうのです。
わかりにくい文章で失礼しました。
あなたは何故"それ"をしたいのか?~目的と手段について~
でした
おわり
レニー・クラヴィッツという重要な存在を考えてみる
2015年に予定されていたレニー・クラヴィッツの来日公演が中止と言う事で
少しレニー・クラヴィッツについて書いてみたいと思います。
レニー・クラヴィッツについてのプロフィールなどはウィキペディアを見てください。
ここでは彼が音楽業界に与えた影響の大きさについて書きます。
レニー・クラヴィッツがデビューしたのは1989年です。
ですので1988年あたりにデビューに向けてのプレゼン活動などをしていたと考えられます。
レニクラのデビューにまつわる逸話紹介
彼は自費でレコーディング済のマルチトラックテープをもってレコード会社をまわっていたそうです。
レコーディングスタジオ費、エンジニア費など当時相当な金額がかかったと思われますが、それらを親戚などから借金をして自腹でアルバムの録音まで終わらせていたそうです。
当時洋楽で売れていたものといえば「George Michael」「Guns N' Roses」「Michael Jackson」など
80年代ポップス・ロック全盛期の時代でした。
そんな時代に彼の音楽を聞いてデビューさせてくれるレコード会社は無かったそうです。
どこに行っても「こんな古臭い音楽は売れない」「ビートルズの真似をしてどうするんだ?」というような意見を言われた、と本人が語っています。
デビューすることが決まったヴァージンのプロデューサーは後にこのような事を言っています。
「正直売れるとは思わなかったけど、ちょうど新人を探していたし、レコーディングが済んでるから、ミックスダウンだけして発売すればいいから、失敗しても痛くないかな? 程度の気持ちだったよ」
つまり、レニー・クラヴィッツはたまたま自腹で録音済の音源があったから、デビューが出来たという事なんですね。
その後のヒットは私が言うまでもなく世界的に有名なアーティストの一人となっています。
レニー・クラヴィッツが音楽業界に与えた影響
レニー・クラヴィッツが音楽業界に与えた影響は非常に大きなものでした。
当時はデジタル楽器発展の時期でスタジオ機材も楽器もデジタル化が進んでいた時代です。
レニー・クラヴィッツがアナログ機材を使用し60~70年代のロックやファンクなどを織り交ぜた音楽性でヒットを連発したことから、トレンドが70年代に戻りました。
ちょうど日本ではCHAGE&ASKA、B'z、プリンセスプリンセス、TMネットワークなどが売れている時代です。
「やっぱりアナログだよね」という事でビンテージ機材ブーム、ビンテージギターブームなどはレニー・クラヴィッツの影響だと言って間違いないと思います。
Mr.Childrenにいたっては「深海」で、わざわざレニクラで使ったスタジオで録音したりと
「Circus」のサウンドやアレンジを強く意識した内容となっています。
レニクラのヒットをトリガーにして始まったアナログ回帰やビンテージ機器回帰
それにつづくビートルズなど60年代~70年代の音楽の再評価が起きたと考えています。
その後の影響
レニー・クラヴィッツがアルバム「5」を発売した1998年の事です。
ちょうどレコーディングスタジオにProTools(当時バージョン5)が入り始めていた時期で
エンジニアの中にはProToolsを嫌う人たちも多くいました。
そんな時にレニクラの「5」はProToolsで作られたという事とギターアンプを使わずにアンプファームで行った
という情報があった事で「レニクラもProToolsでやってるんだ」という事が広まり
一気にProToolsへの移行が進んだような気がします。
皮肉にもアナログ機材ブームの火付け役だったレニクラがProToolsへと録音環境の移行を加速させることになるのですが
これも彼なりの「ロック」なのだと私は思っています。
(これについての話は長くなるので今度の機会に書こうと思います)
最後に
2015年の現在でもレニー・クラヴィッツのアルバム作品、デビューから5までは非常に聴く価値があります。
いまだに新しい発見もあります。
あの大胆なエフェクトの使い方やサウンドのメリハリの付け方などひとつのバイブル的な存在感さえ感じます。
最初の話に戻りますが
レニクラが親戚から借金をしてレコーディングをしていなかったら、その才能は埋もれていたかもしれません。
そうです彼は誰からも評価されないまま、自分を信じて行動し、その結果大きな成功を手にしたのです。
レニー・クラヴィッツの軌跡を辿っていくとひとつの道が見えてくるような気がします。
もちろん音楽だけでなく他の仕事や人生でも通じることでしょう。
この記事がこれから何か始めようとしている人の参考になれば幸いです。
終わり
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感性の磨き方について
感性を磨く
そんな言葉を聞きます。
実際音楽制作の現場では「センスがいい」というような言い方もする 感性。
これを磨きたい、または育てたいという人も多いのではないでしょうか?
先に私の結論を書いてしまうと 感性には個人差があり、おおよそ10歳~15歳程度までにほぼ決まっているもののような気がしています。
しかし今持っている感性を育てる事は十分に可能だと思います。
これを 一般的に感性を磨く という事になるのでしょう。
では どのような方法が有効か?という私なりの感性のトレーニング方法を紹介します。
感性というものは=感受性だと最近思うようになりました。
感受性とは何かの刺激に対してどのくらい敏感に多く影響を受けるか? という事だと思うのですが
影響されやすい人、流されやすい人とは違う性質のものです。
簡単に説明すると
正面から書かれた絵を見て背面を感じる事が出来るか?
絵から作者の心情、メッセージを受けとる事が出来るか?
というようなものだと考えています。
つまり、ことわざの 「一を聞いて十を知る」を感覚に置き換えたものです。
具体的に私がおすすめする感性を磨く方法ですが
本物を見る、本物に触れる という事です。
その中でも芸術作品観賞が最適です。
できれば陶器や骨董などよりも絵画をお勧めします。
日本を代表する芸術家
横山大観、円山応挙、葛飾北斎、竹内栖鳳、川瀬巴水、川端龍子、速水御舟、東山魁夷
、岡本太郎などの作品が国立美術館などのにも多く所蔵されていますので機会があれば是非足を運んでみてください。
この時、何故本物なのかというと、写真や映像では実物のもつ雰囲気、気配などが伝わりません。
こういった実際の作品とじっくり向きあうという時間を過ごすと、少しずつ感受性の扉が開いてくると思います。
音楽でこれを行うとすれば
やはり 生の演奏を聴く という事につきます。
オーケストラを聞きに行くにしても可能であれば日本のオケではなくベルリン・フィルなどの公演をチョイスしましょう。
クラシックでなくとも他のジャンルでも同じように できるだけレベルの高い演奏を選ぶ事をお勧めします。
少しお金はかかりますが、必ず何かの収穫がある事でしょう。
私自身が芸術や職人技が好き という事も大きく関係していますが
一流の作品から何を感じ、何を得、何に生かしていくか? という正解のない心への問いかけをする時間を作ってみると
何か音楽でもヒントが見えるかもしれません。
感性の磨き方について でした。
おわり
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円山応挙: 日本絵画の破壊と創造 (別冊太陽 日本のこころ)
- 作者: 金子信久
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/03/18
- メディア: 大型本
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