【書籍】アル・シュミット流 ボーカル・楽器録音術 レビュー
日本で発売になって少し話題になっている「アル・シュミット流 ボーカル・楽器録音術 」をレビューします。
AL SCHMITT ON VOCAL AND INSTRUMENTAL RECORDING TECHNIQUES アル・シュミット流 ボーカル・楽器録音術
- 作者:Al Schmitt
- 発売日: 2021/02/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
アル・シュミット氏の事は私が書かなくても十分に世界的に名の知れたレジェンド・レコーディングエンジニアなので割愛します。
書籍はB4版、120Pほどの内容となっています。
まず、タイトルにあるボーカル録音術が冒頭に書かれています。
基本的には、「ボーカリストや音楽ジャンルに合わせてマイクを選ぶ」
「歌いやすさなどに気を配る」「どういう場所で録音するかで変える」など技術面の説明ではなく、仕事に対するエンジニアとしての心構えが主な内容です。
また、有名なアーティストのレコーディング時のエピソードなども織り交ぜられて書かれていますが、1970年代などの話なので、現代のレコーディング環境ではあまり参考になることは少ないです。
"ボーカルに合わせる" "音楽のタイプでマイクを選ぶ" というような表現が多々でてきますが、どのタイプの音楽にはこういう理由で、どのマイクを選ぶなどの説明は全くありません。
ファーストチョイスマイクはNEUMANN U47TUBEという事はわかりましたが、その他は、あまり参考になりません。
タイトルからボーカル録音について詳しく書かれているような印象を受けましたが、ここまでで7Pほどです。
機材の写真だけのページもあるので、実際の情報量としてはかなり少なめです。
次に楽器などの録音の記述になります
マイキング距離などの具体的な説明があるものもあれば、そういったものは無くよく使うマイクの紹介程度で3行で終わるものもあり、ざっと書かれているだけという印象です。
ここまでで、本文は終了して、のこり全体の2/3は氏のお気に入りの機材紹介となります。
NEUMANN U47、U67、M49、AKG C12、フェアチャイルドなど、ビンテージ機材の超定番が写真とテクニカルデータなどで紹介されています。
アル・シュミット氏の簡単なコメントはありますが、誰もが一流品と認める歴史的な機材ばかりなので特に目新しさはありません。(いちぶAudio-Technicaなどの新しいマイクの紹介はあります)
音のコメントも「とても素晴らしい音がする」などが多く、読み物、資料としては面白みはありません。
値段的に、とても個人が買うような機材ではないのでカタログ資料としての付録と考えれば良いでしょう。
最後に、全体の印象ですが
無指向とオムニという表記が入り混じったりして読みにくく、文字も大きく、レイアウトもあまり良くない内容です。
1ページの半分が写真やf特表、後は空白などが目立ち,、正直 自費出版?のような内容でお世辞にも おすすめできる書籍ではありませんでした。
特にタイトルにある「ボーカル・楽器録音術」という録音技術のノウハウが書かれているような印象からは全くかけ離れた内容と感じます。
簡単なインタビューを文字にしたような内容です。
アル・シュミット氏のファンが手にしても 3,300円の価値があるかな・・・?という感想でした。
多くのDTMerや宅録をしている人が知りたいのは、ボーカル録音のテクニックだと思うのですが
ボーカル録音のディレクション的なものも含めたノウハウを知りたいならば
レコーディングエンジニアの伊藤桂一さんが書かれている「歌は録音で決まる!」のほうが100倍オススメできます。
AL SCHMITT ON VOCAL AND INSTRUMENTAL RECORDING TECHNIQUES アル・シュミット流 ボーカル・楽器録音術
- 作者:Al Schmitt
- 発売日: 2021/02/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)