AI時代の音楽制作について考えてみる
2017年新年早々に保険会社がAI(人工知能)を導入する事による人材削減のニュースが目に入った。
AIが人間の仕事を奪う という話を聞くようになってしばらく経つけが、実際はかなり先の話だろ?と どこかで思っていたが、実は一般の人が予想しているよりもかなり早くAI時代が来るかもしれない。
今回は前々から考えていたAI時代には音楽制作はどうなっていくのか?について私の妄想を書いてみたいと思う。
マスタリングのAI処理
音楽制作関係で記憶に新しいサービスといえば「LANDR」ではないだろうか?
サーバー上でマスタリングを自動で行なってくれるサービスで無料から使える。
LANDRは人工知能アルゴリズムで処理を行なっているらしいが、自分で学習するような機能が付いて行くと日々進化しやがては人間と同じ作業をほんの数秒という短時間で行うようになるだろう。
音の趣味は様々だが少なくとも巷にあふれる激安マスタリングという名の歪ませ屋よりは良い結果が出るだろうと予想する。
ミックスダウンのAI処理
マスタリングはミックスダウンされた2MIXに対して処理をするものだが、ミックスダウンの工程は音数や処理の複雑さから未だにオートミックスというようなシステムは確立していないが、実はこの分野も昔から研究されている。
izotopeのNeutronが最近話題を集めたが、どうやらプラグイン業界もこの方向に向かっているようだ。
近い将来ミックスダウンも自動化され細かな修正処理だけをすれば完成するなんて事になるだろう。
録音のAI処理
さらに前の段階。
録音はどうだろうか?
MIDIを使ったいわゆる打ち込みとは違いマイクで音を録音するという作業でAIを導入するとすればアシスト機能だろう。
マイクを立てる位置や種類の選定を目的に合わせて補助してくれるスマホアプリのようなものだ。
ちょうどゴルフのキャディーアプリ的な事をしてくれそうではある。
ただ録音はなかなかAIがやるという事が難しいとも思うが、手に代わるような自立型機械が出てくれば録音もAIができそうな気がする。
少なくともDAWの操作は音声指示で誰でも簡単にスタジオのアシスタントがするレベル程度のオペレートはしてくれるようになるだろう。
作曲・アレンジのAI処理
ニュースなどで目にするのはこの分野の研究だろう。
作曲。 それは今まで人間の専売特許のようなものであったが、それはもう昔の事になりつつある。
売れっ子の作曲家やアレンジャーが過去の名曲のコード進行やアレンジテクニックを真似するようにロジックとして分解された音楽データは実はAIの最も得意とする分野かもしれない。
作曲の仕事といっても様々な種類があるが
まず商業音楽について考えてみる。
ゲーム、アニメ、ドラマ、商品紹介ビデオなどBGMとして音楽が必要でそれほどのクオリティーは求められず、しかも安価で大量に必要な音楽。
現在は作曲家からアルバイト、市販の音楽ライブラリーなどを利用しているBGM用音楽。
素晴らしいメロディーとか奇抜なアレンジとかそういうものよりも汎用性やループ可能な構成、画面を邪魔しない音楽というものを求められる事も多い。
映像制作の現場でも少し音楽制作をかじった人は自分でループ素材などを切り貼りして簡単なBGMを制作する事もある。
そういう「なるべくお金をかけたくないけどそれなりの品質」を求められる音楽あたりからAI作曲がどんどん実用化されて行くのではないかと予想できる。
曲調、BPM、長さ、イメージを入力すれば完成品WAVEが吐出される。
そんな感じだろうか。
次にアイドルやタレントの歌うポップスはどうだろうか?
ここでは作曲そのものよりもコード進行とかアレンジのバリエーションを広げるためにAIが導入されるのではないか?と考える。
近年の作曲+アレンジ+ミックスを一人で行うクリエイター達の曲を聞くと なんというか
失礼な言葉を使うと「全部一緒に聞こえる」か「三種類くらいしか引き出しがない」事が多い。
要は曲の作り方やコードの使い方、アレンジやギミックが同じような事しかできていないのだ。
昔はアレンジャーやプロデューサーがついて様々なアプローチなど技術的な補助を行なっていたものが予算の都合などで完パケを一人で作るという事が多くなったのが原因かもしれない。
このアレンジャーやプロデューサーに該当するような役目をAIが行うというのは十分実用的だし理にかなっているように思える。
CubaseなどではAIではないが既にコードアシスト機能などが装備されている。
AIを音楽に導入する場合の問題点
AI作曲やアレンジが本格的に市場に入ってくると出てくる問題は"著作権"の所在だろう。
ボーカロイド音源の初音ミクなどはキャラクターとしての商標権などが問題になり
音は自由に使えるけど初音ミクという名前の使用は制限があるという事が起きているが、それよりもはるかに課題がある作曲の著作権が誰にあるのか?がおそらく大問題になるだろう。
作曲者は誰か?
ソフトの開発者?購入者? それとも誰でもない?
以前 野生の猿が自撮りした写真は誰が著作者なのか?という事が問題となり裁判まで行われた。
結果「猿には著作権は発生しない」という結果となり写真の著作権は誰にも発生せずにパブリックドメインという扱いになったようだ。
「サルに著作権ない」 自撮り写真めぐる裁判、動物愛護団体が敗訴
Aiのプログラムは誰かが作成するものであるのでAI事態には著作権が発生している。
場合によっては特許も取るだろう。
そのAIが作った音楽は誰のものか?
仮にAIの開発者に著作権が認められると自由に使うことは困難で使用者は躊躇するだろうし、逆に使用者に権利が発生してしまうのもおかしな気もする。
上にあげたように商業用のBGM作成AIを売る場合は最初から〈著作権は発生するがライセンスフリーとして自由に使っても良い、その代わりに著作権登録などは行なってはいけない〉などの条件が必ず付くだろうと予想できる。
こういった問題は先に法整備が進むことはあまりなく、何か問題が発生したあと、司法の判断を参考に法律が後から出来る事になるだろう。
さて
本格的にAIが人間社会に入ってくる近未来。
音楽家や音楽制作に係る人はどんな対応をすればいいのか?
各々が考えておく必要がありそうです。
おわり