オンラインで依頼できるマスタリングサービスを比較してみた
Google検索で 「マスタリング」と検索すると約 440,000 件の検索結果と業者が出しているリスティング広告が出ます。
様々な理由でマスタリングという工程を自分でできない場合、またはきちんとしたプロにお願いしたい場合はこういったインターネット経由で頼めるオンラインマスタリングというサービスを利用したいと思うのはごく当たりでしょう。
さて 前々から感じていたのですが、ブログやツイッターでマスタリング関係の話題を取り上げるとかなり反応があり
その中には「ひどい経験をした」という意見も多くあります。
そのひどい経験とは具体的にどんな状況なのか?
それを探るべく ネットで発注できるオンラインマスタリングに調査を入れてみました。
マスタリングサービスは同じような業者が乱立した事もあり
お試しマスタリングなる無料サンプル作成をしてくれるところが沢山あります。
最近ではTHE MASTER などのメジャーなスタジオでもこういったサービスがあります。
THE MASTERやオレンジ、ビクター、東京CDセンターなどは実績もあり使ったことも多々あるのでいまさら不安やお試しなんかは必要ないので
それ以外のマスタリングサービスに同じ曲を依頼してみました。
基本的におまかせで 音圧がほしいとかそういった要望は出さずに やってもらったものを聞いて音の状況と個人的な意見を書きたいと思います。
さて 業者は全部で8箇所。
依頼した楽曲はバンドもの、わりとBPM速めのギターロックです。
なお業者名は 名誉毀損だと言われると困るので伏せます。
音も公開したかったのですが、予想よりあまりにも酷かったため楽曲提供してくれたバンドにも影響が出る可能性があるので非公開としました。
*RMS値はAES17規格での測定となります。Cubaseなど通常のメーターでは-3dBで見てください。
1曲 2,000円~
HPには電源ケーブル云々とかオカルトっぽい記載あり
サビのRMS -5.5値 PEAK値 -0.3
納品ファイル形式:WAVE 44.1kHz 32bit
低音カット、ステレオエンハンサーがきつめ、イントロ、Aメロ~サビとくまなくバリバリ歪んでる状態。
歪んでいるせいもあってキックが間延びしてスピード感が死んでいる
サビからコンプのかけ過ぎで音量低下
評価 0点
1曲 2,500円~
MANLEYなどアナログアウトボード機材使用が売りらしい
サビのRMS値 -6.5 PEAK値 -0.3
納品ファイル形式:Broadcast WAVE 44.1kHz 16bit
低音カットしているがこもり気味、ステレオエンハンサーがかなりきつめ、イントロ、Aメロ~サビとくまなくバリバリ歪んでる状態。
高価な真空管機材(バリミュー)などを使ってサチュレーションと過剰入力でドライブさせてタイトにしました とか支離滅裂な事を自慢してきました。
軽くて明るくない、簡単に書くと典型的なしょぼい音
サビからコンプのかけ過ぎで音量低下
評価 0点
1曲 3,000円~
わりと新しめのサービスらしい
サビのRMS値 -5.5 PEAK値 -0.1
納品ファイル形式:WAVE 44.1kHz 32bit
低音をカットしているが100Hzあたりを持ち上げてさらに歪んでいるためスピード感が死んでいる。
音圧も上げて派手にかっこ良くしたと自慢気だったが全体的にチリチリと歪んでいる。
評価 0点
1曲 2,000円~
ハイクオリティなモニター環境と電源とアナログハードが売りらしい
サビのRMS値 -6.5 PEAK値 -0.1
納品ファイル形式:Broadcast WAVE 44.1kHz 16bit(ACIDファイル BPM120 テンポデータ付属)
低音をカットしている、ステレオエンハンサーはなし。
中音域を強調して高音域を下げているためボーカルがやや歪み気味。
全体的にはこもっている明瞭度が低い印象。
評価 0点(ファイル形式が話にならないので減点しました)
1曲 5,000円 ~
エレクトロニカ系?が得意っぽい
サビのRMS値 -5.5 PEAK値 -0.1
納品ファイル形式:WAVE 44.1khz 32bit
低音をカットしている、ステレオエンハンサーきつめ
全体的に音が軽い、サビでサイドのギターを中心に歪む。
評価 30点
1曲 2,500円~
今回の中ではHPの内容など一番アマチュアっぽい印象だった
サビのRMS値 -5.5 PEAK値 -0.2
納品ファイル形式:Broadcast WAVE 44.1kHz 16bit
低音をカットしている、ステレオエンハンサーあり。
音を明るくしようとしている感じ、明らかな歪はなし
評価 50点
機材やケーブルにこだわっているがプロフィールの経験はいまいちの印象
1曲 4,800円~
サビのRMS値 -5.3 PEAK値(MP3のため省略)
納品ファイル形式:MP3 360kbps
若干ステレオエンハンサー処理がある。
普通に曲に合わせて処理しました というごくごく普通の仕上がり。
評価 80点
今回の中では経験や実績など 一番まともそうな印象
1曲 3,500円~
サビのRMS-5.8値 PEAK値 -0.1
納品ファイル形式:Broadcast WAVE 44.1kHz 16bit
意図的な低音カットやエンハンサー処理はなし。
普通に曲に合わせて処理しました というごくごく普通の仕上がり。
評価 80点
さて 今回の結果だけを見ると 低音カットとステレオエンハンサーをデフォルト処理するところが多い印象です。
それ以前にサビだけではなくイントロ頭から歪んでバリバリいっているところも多く マスタリングかどうかも疑問だし そもそも音聞いてるのか?というくらい酷いです。
これはマスタリングの話題が荒れるはずですよね・・。
納品ファイルもBroadcast WAVEだったり32bitだったり 業者Hにいたってはアシッダズファイルを送ってくるとは・・もう頭がクラクラします。
ちなみに曲調として似ているメジャーバンドの参考楽曲のマスタリングを行っている世界的に有名なSterling Soundのテッド・ジェンセン (Ted Jensen)のものでRMS値はサビで-6近辺です。
音を歪ませるまでマキシマイザーに突っ込んで-5.5とかを稼いでいるようですが 音が割れてしまっているので音圧がどうのという事の話の前の基本的なところですでにダメです。
さらにミックスをした当事者から言わせてもらうと、スピード感とビートの"ノリ"を感じるようにタイトなサウンドにしたものをコンプを深くかけ、マキシマイザーで歪ませ、ローエンドをカットし軽くするというような処理をされたのでは困ります。
今回の結果を見た限り 格安マスタリングサービスの殆どは素人が遊びの延長でやっている マキシマイザーかけごっこ だと判断できます。
また中には特定のジャンルが得意だったり、自分がクリエイターとしてやっているジャンルは処理できるけど他のジャンルは知らないし興味ない という感じの業者もありました。
もしもジャンル依存したサービスであれば ジャンル外の依頼は断るくらいしてほしいものです。
少なくともお金をとるレベルじゃない・・と感じます。
ということでみなさん 正式発注の前にお試しサービスがあれば 必ず利用しましょう。
オンラインで依頼できるマスタリングサービスを比較してみた でした。
おわり