レコーディングエンジニアの仕事ブログ

レコーディングの事、音楽の事、DAW.DTMの事など適当に書きます

レコーディングスタジオ閉鎖について思うこと


正式発表はもう少し後になるようだが、最近一口坂スタジオ閉鎖という連絡があった。
一口坂だけでなくここ数年は大きなスタジオから小さなスタジオまで閉鎖が相次いでいる。
本館の方では老舗スタジオについて色々書いていますが、今回はスタジオ閉鎖について違う側面での感想を書きたいと思います。

まず他の会社や企業と違うのは閉鎖であって倒産でないという事。
スタジオ倒産というニュースは殆ど聞かない。
もともとスタジオ単体で上場しているような経営ではないので表に出ないだけかもしれないが
倒産ではなく閉鎖という事は違った意味を持っていると思う。

倒産とは違い自らスタジオ閉鎖を決めている という事。
親会社の判断であったり経営陣の判断であったりと様々だとは思うが、要は銀行などから資金を調達して何とか続けるという道は選択しなかったという事だ。

何を言いたいかと言うと、この先スタジオ運営を続けても好転する望みがなく傷が大きくならない内に終了しよう という判断をしているという事。
これは非常に重い事だと感じます。音楽業界全体の衰退は皆感じているし今後も良くないだろうなとは思っているけど、有名な大型老舗スタジオが閉鎖を決めていくという現実は気分的にも一層危機感を感じさせる出来事なのです。

特にレコーディングスタジオは一旦閉鎖すると解体される事になるので、もし将来景気がよくなった時にやり直そうとしても同じスタジオは再現出来ないのです。
同じ機械や楽器があっても同じにはならないのです。こういった事も含めての決断だという事です。

音楽業界というごく狭い世界であれば大きなスタジオは体力勝負で他のスタジオと生き残り合戦をしたほうが将来的に仕事を取れそうなものなのですが、この先10年スパンで考えると仕事全体量はもっと減るのは確実だし、1年に数回しかない大きなセッションを取る為に維持する路線よりも撤退をする方が得策と・・判断しているのです。

なんだか暗いニュースですがこれは現実で来年以降もいっそう加速するでしょう。

また音楽系の学校に通っている学生や将来レコーディングの仕事に携わりたい若者もスタジオに入る事が困難になるのは必至です。
大きなスタジオが閉鎖するという事はそこでアシスタントをしている優秀な経験者が他のスタジオにいく事になりますから、ただでさえ求人が少ないスタジオ業界で新人を取るなんて所はどんどん減っています。

音楽業界には夢があるべきだと思いますが、こういうのが今のスタジオ業界の現実です。