レコーディングエンジニアの仕事ブログ

レコーディングの事、音楽の事、DAW.DTMの事など適当に書きます

蟻とキリギリス

有名な童話で蟻とキリギリスがあります。
皆さん知ってのとおり好きな事をして遊んでいたキリギリスは真面目にこつこつ働いていた蟻を馬鹿にしていた。
結局キリギリスは冬を越えませんでした。っていう話です。

これは深い話なのですが道徳を教えているというより世の中の仕組みを教えているようです。
しかしキリギリスが蟻に人気のある音楽家だったらどうでしょう?
蟻たちはキリギリスが冬を越せるだけの報酬をあげていたかもしれません。

ええと、何を言いたいかというと、音楽家や芸術家、タレントや役者は蟻によって生活が出来ているという事です。
蟻とは一般の人の事を示します。
つまり無能な上司の下で嫌々ながらも働くサラリーマン・OLや工場で延々と弁当に梅干を乗せる仕事をしている人たちです。

◆自分も昔は"普通の仕事"は下らなくて程度が低い人間のすることだと思っていた時期がありました。
今は違います。
そういう普通の生活をしている人が多くを占めているからキリギリス達が成り立っているのだと気づいたのです。

◆個性を尊重する教育などと最近耳にします。
やりたい事をやりなさいって言われてもやりたい事が無い人のほうが多いんですよ。
そりゃ楽して儲けられれば話は別ですが仕事とは常に苦痛や我慢が必要です。
なので人から与えられた仕事をする代わりにお金をもらう職業のほうが圧倒的に楽で安全なんです。

◆ではキリギリス達(音楽家など)はどうでしょうか?
君はピアニストが足りてないからやってなんて事は絶対ありません。自らピアニストになる為に茨の道を選ぶのです。
保証も無い、給料も不安定、そもそもプロになれるかさえもわからない職業です。

なのである意味私は公務員をしている人が羨ましくさえ思うのです。
自分だったら絶対に耐えられないからです。
仕事=人生の喜びだと思っている自分は公務員は無理です。
なぜならやりたいことが他にあるからです。

しかし知人にも蟻系の人は沢山います。

◆もし皆に個性があったら?
たとえば中学卒業時に将来の仕事を選ぶとして、今は全体の8割がわからないと思っているはずです。
それが8割が ミュージシャン・画家・映画画監督・タレント・デザイナー・冒険家などを真剣に目指したらどうなるでしょうか?

世の中の普通の仕事をする人がいなくなります。
農業も漁業も工場も会社も役所も機能しません。
これが個性を伸ばすという事でしょうか?

そうではありませんよね。
仕事は仕事として働き、夜のみに行く、合コンに行く、休みの日にはドライブに行く、友人とサッカーをする。
これが幸せな人生だと思うのです。

◆キリギリスはある意味不幸
ではキリギリスはどうでしょうか?
多くの場合好きな事=仕事です。
これは辛いです。
デザイナーを目指してはいった事務所はスーパーのチラシしか作っていなかった。
作曲家をしているけど仕事が来るのは携帯ゲームのBGM。
私はピアニスト、やっているのはピアノ教室の先生。
これが多くの現実です。非常に辛いことなのです。
なのでこれもある種蟻と同じ与えられた仕事をしているだけなのです。

◆まとめ
音楽家を目指すという事は大きなリスクがあります。
それを回避するのは実力だけです。
実力をつけるには努力するしかありません。
そしてキリギリスの生活を支える蟻を馬鹿にしてはいけません。
社会とは良く出来ているものなんです。

そういう目で蟻とキリギリスを見るとまた違った物語の本質が見えてくるかも知れません。
努力したキリギリスだったら結末はどうなっていたのでしょうか?