レコーディングエンジニアの仕事ブログ

レコーディングの事、音楽の事、DAW.DTMの事など適当に書きます

音楽の最大の欠陥とは何か?

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もう私が書かなくてもよいくらい音楽産業の衰退は著しく
今後画期的な回復は見込めそうもないところにまで来ている。

ちょっと制作者からの角度を変えて 一般的な商業製品としての音楽の欠陥について考えを述べたいと思います。



・音楽商品の特徴

衣食住という言葉があるように人間の生活には着る物、食べる物、住む場所が不可欠で
この3つは継続的な消費に類する商品でもあります。
最近では携帯やスマホなどの通信というものも生活に欠かせないものになりつつあるので
近い将来は衣食住通となるかもしれません。

では音楽はどうでしょうか?
音楽というものは消費者からすると無くても生活には全く支障のない、いわば嗜好品です。
そして中学生の時に買ったCDが30年たった今でも聴くことが出来、古い新しはありますが
昔の音楽を聴くことが恥ずかしい事なんてないのです。
同じものを20年も30年も使用することができる非常にコストパフォーマンスに優れた商品であり
なおかつ流行というものにそれほど左右されないという意味では洋服などとは全く違った特徴を持ちます。
これは消費者側のスタンスにたったものであり生産者側からすると、継続的な買い替えや課金が出来ないという事になり、非常に生産性の悪い商品であるとも言えます。
(ここではカラオケの印税などは含まずに考えています)



・音楽とその他の製品の類似点

世の中に出回っている音楽は商業目的の製品でもあり、芸術作品でもある という考えが一般的です。
「アイドルの曲なんて芸術じゃない」なんていう意見もあるでしょうが ここではこういった事は考えずに、商品としての音楽を考えます。

よく音楽と比べられるものにアニメや映画など映像作品があります。
映像作品も音楽と同じく売上が落ち込み低価格化が進んでいる物のひとつです。

他には漫画や小説、雑誌などの印刷出版物も似たような商品です。
映画やアニメ、漫画などは一回観れば十分という人も多く、音楽と同じようにレンタル店やネットカフェなどで済ますという事をしている人も多いでしょう。

小説などの文庫本には独特な文化があるように思います。
ある種音楽マニアと通じるものを感じます。
本という媒体でないと満足しない、アナログレコードを好んで聴く、どこか同じ志向だと思います。





・音楽とその他の製品の相違点

音楽とその他漫画や映像作品との大きな違いは幾つかあります。

まず、継続性の無さ
漫画やアニメなどは続きが気になって次の話を読みたい と思い新作の購買に繋がるのに対して音楽作品ではシングル単位、アルバム単位で完結しており続編という考えは基本的にありません。
また作品のリリース期間も年1回、ベテランだと数年に1回というスパンでの新作発表になるので忘れた頃に新作が出ていた・・なんて事も多いと感じます。

次に、新作、特に新人の周知の難しさ が挙げられます。
漫画やテレビアニメなどは週刊誌や月刊誌での連載があり、アニメでは放送枠を前作から引き継ぐ事になります。
さらにTVアニメで言えば視聴者は無料で楽しむことが出来ます。
音楽はどうでしょうか?
新人の作品を広告するのには各種雑誌での取材など昔ながらの手法が主流です。
YOUTUBEなどで手軽に宣伝できるようになったといっても、どうやってそこまで来てもらうのか?という広告の難しさがあります。
こういう事もあってアニメの主題歌というタイアップ枠が今でも重要な広告枠扱いになっているのだと思います。



次に、時間的な問題
音楽はYOUTUBEのサムネイルをみたり、アーティスト写真やCDジャケットを見たところで何も内容がわかりません。
アニメや漫画・小説とちがってあらすじやコメントで作品の概要を説明する事も出来ません。
文字や写真という情報では音楽ジャンルや顔といった、ごく少ない情報でしか消費者は判断できないのです。
ですので試聴という方法で作品を聞いてもらう方法が長年採用されています。
あるデータによると音楽の試聴で好き嫌いを判断するのに5秒~10秒という時間あれば良い
というものがあります。
最初の10秒、サビの10秒でどれだけ作品の本質を伝えられるでしょうか?
多くの場合はサウンドや声で好き嫌いを判断しているのですが10秒とはあまりにも短い時間だと感じます。





・音楽の最大の欠陥とは何か?

以上の事から音楽の最大の欠陥は「ある程度の時間を聴かないと内容がわからない」という事だと私は考えます。
写真やイラストなどの場合は100枚並べてあるWEBページから好きなものをチョイスすることは簡単です。
同じようにYOUTUBEのサムネイル画像だけ100曲並んでいる中から自分の好きな曲を探すとなると、すべて10秒聴いても1000秒(約17分)も時間がかかります。
多くの人は最初の2~3曲で好みのものがなければそれ以上聴くのをやめることでしょう。
かといって一部のWEBページのようにアクセスすると勝手に音楽が流れるという事は迷惑だと感じる人が多く宣伝としては逆効果になる事もあります。

音楽の最大の構造的欠陥は 「聴かないといけない」 という事なのです。
ですので21世紀も14年たった現在も未だにストリートミュージシャンが沢山いるのでしょう。
ストリートでやれば少なくともそこを通る人に10秒は音楽を聞いてもらえます。




・今後の課題

では多くの人に聞いてもらえるようにどこかの媒体で流せばいいという事になりますが
TVCMでは高すぎる、タイアップするには知名度が必要と新人やインディーズでは非現実的です。
地元ラジオでかけてもらうという方法がありますが番組1回だけかけてもらっても聞いている人はそれほど多くありません。これも広告としては効果が薄い部類でしょう。
定額のストリーム配信などが広まれば聞いてもらえる機会も増えると思う人がいるでしょうが
結局、曲をかけてもらうにはレーベルやレコード会社が宣伝費を支払う事になると思うので今の有線放送のJPOP枠とさほど変わらないと予想できます。

正直私も何をどうすればいいのかわかりません。

音楽を聴かなくても理解してもらえるような仕組みを考えられれば大きなビジネスに発展するかもしれませんね。