レコーディングエンジニアの仕事ブログ

レコーディングの事、音楽の事、DAW.DTMの事など適当に書きます

音圧戦争(Loudness War)について思うこと

巷では 音圧戦争は終わった と言われています。
はたしてそうでしょうか?

もともと音圧戦争とはラジオなどでオンエアされた際に聞こえ方が派手=セールスに繋がる というような理由で加熱していった手法が長い間続いた事をさします。日本ではメディアは有線放送(USEN)向けになるでしょうか。

・本当に音圧戦争は終わったのでしょうか?
アメリカの有名マスタリングエンジニア達が異を唱え始め、過度な音量アップはやめようという事がルールとなりつつある という情報が戦争終結という話が広まるきっかけになったはずです。

日本の状況はどうでしょう。
依然音の大きいCDが主流です。たしかにピークの2010年あたりから比べると同じアーティストのCDも少し落ち着いたかな、という程度です。
私個人の意見ですが音圧を必要とするのはこれから売りたいCD(アーティスト)であると思うのです。

なぜなら他より目立つ事で印象を強くし 売るために施された処理だからです。

逆に考えると もう既に十分なファンを持ち、ニューアルバムを発売すれば宣伝もせずとも、内容に関係なく売れるアーティストは音圧戦争に参加する必要が無いとも言えると思います。


しかしどうでしょうか?
日本にいるいくつかの「ほっておいても売れる人たちのCD」も漏れなく高音圧です。しかもけっこうぎりぎりまで処理をしています。

音圧戦争が終わったというならばこういった大御所、メジャーアーティスト達が進んで音圧を正常化するべきではないでしょうか?

缶コーヒーに例えれば、120円が100円に値下げされ、さらに量も250g缶が普通になってしまうと120円・190g缶には戻せないというようなものなのでしょう。

そうなっていない今 まだ音圧戦争は終わっていないと思うのです。


実は制作側が気にしている音量や音圧は売り上げにほとんど影響していないというデータがあります。
ユーザーは音圧の高い楽曲は一瞬派手に聞こえて耳につくけど、結局は好き嫌いで購入するしないを決めているという事です。当たり前ですよね。
ダンスミュージックなどは少し違うかもしれませんが おおよその音楽はこのようなのが実情だと思います。


・そもそも音圧戦争の何がいけないのでしょうか?
過度なマキシマイズ処理で音が悪くなる というような事はほとんどのユーザーには実感が無いことだと思います。
(若年性難聴患者が増えているというのは音圧ではなく再生音量の問題なのでここでは省きます)
結局音圧を気にしているのは制作側や一部のコアユーザーだといえると思います。
実は音圧を求めるのはアーティスト本人である場合が多いように感じます。他の誰かと比較し聞き劣りしないように という非常に対外的な考えでとてもとてもクリエイティブな考え方では無いと思うのですが、売り物である以上は仕方が無い事だとも思います。
エンジニアの立場からすると、音圧をUPするためのミックスダウン手法、さらに音圧上げの為のアレンジ手法なども存在し、いったい何かしたくて音楽を作っているのか?という根本的な疑問さえ感じることがあります。

まとめると

・少なくとも日本では音圧戦争は終結していない。
・音圧なんてものは高くても高くなくても実はどうでも良い事である
・音圧上げたい人は上げればいいし、正常値にしたい人はすれば良い
・音圧なんて気にする前にもっと他にやることが沢山ある
・売れてる人たちこそ音圧を正常化するべきだ

これが今の私の見解です。