レコーディングエンジニアの仕事ブログ

レコーディングの事、音楽の事、DAW.DTMの事など適当に書きます

レコーディング現場での緊張感

「Pro Toolsシステムでのレコーディングでは音が消えなくて楽だよね」

これはスタジオアシスタント時代の同僚と先日久しぶりに飲んだ時に後輩から出た言葉です。

その昔(と言っても数年前まで)はレコーディングにテープレコーダーを使用していました。
アナログならSTUDER A800やA80
デジタルはSONY 3348
テープメディアで録音をする場合、部分的修正、いわゆる"パンチイン"という操作が必須となります。
特にアナログMTRではパンチインは一瞬早く、アウトはもう少し早め という具合にタイムラグが有り、しかも音の繋がりは再生してみないとわからないという非常に厄介なものでした。

アシスタント・エンジニアはこのパンチイン/アウトが主な仕事でその技量が個人の評価に繋がったという側面がありました。
上手く繋がらないと、もう1小節録音しなおさなくてはいけなくなったり、場合によっては最高の演奏が消えるなんて事もあったわけです。

このパンチインは様々な手法があってサントラや演歌などの大編成録音なんかでは色々な楽器の部分的修正を一気にやるなんていう荒業もあったのです。
例えば
「アコギ 1コーラスのC8小節直します」
「あ、じゃあパーカッションも同じ場所からCいっぱいまで」
みたいな会話が交わされてアシスタントはスコアを見ながら3348のRecレディーボタンでパンチイン/アウトをするなんていう状況です。

このパンチインは消して上塗りをする事になるのでUndoなんてもちろん出来ません。
一発勝負になるわけです。
これは実は凄いプレッシャーです。
パンチインしたまま録音アウトできずに青くなる夢をみる・・なんて皆経験あるのではないでしょうか?

時代は変わって2012年。
テープメディアも生産が終了しProToolsでのレコーディングが標準となりました。
パンチインは今でも行われていますが消える事はありません。
消えるどころか録音していないパンチインより前の音まで引き出すことが出来ます。

非常に便利でリスクの少ない方法になった事は喜ばしい事です。
しかし何だかあの時のプレッシャーが懐かしく思う時があるのも事実です。

これは歳をとったからなのか懐古主義なのかはわかりません。
ただ その当時のスタジオにはプロ同士の仕事が生み出す緊張感や空気が確実にあった事を思い出します。今は失われつつある空気です。

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